法務教官になってやろうじゃないかという
中高生のみなさまへ


 うれしいなあ。

 こんな地味で大変な仕事を見つけて、やりたいと言ってくれる。その志にも、そんな高い志を持っている若い方がいてくれることにも、うれしいです。

 ぜひ来てください。あなたのような人を待っていました。

 とか言いつつ、もし自分の息子か娘が法務教官になりたい!と言ったら、間違いなく止めると思います。

 この仕事の辛さも怖さも大変さも、一番よく知っているから。

 だからいろいろと掲示板やなんかで、現役法務教官の方から「やめとけ」と言われるのは、そういうことです。

 本当は、来たいと言ってくれる人に、来て欲しいと思ってるに違いないんだから、

 来てください! 大丈夫です。心配しないで来てください。まずはとにかくとりあえず、お願いだから来てください。

* *

 よくある質問に、お答えしてみたいと思います。

 Q 法務教官になるにはどこの大学へ行けばいいですか?

 好きな大学でいいですよ。
 なんなら、何年か浪人してもいいし、留年してもいいし、フリーターしててもいいですよ。

 要は、法務教官採用試験に受かったらいいんです。

 そのために必要な知識は、教育学・心理学・社会学・時事ですから、それ関係の学部にいると、確かに勉強するとき楽です。でも、理学部でも経済学部でも体育学部でも、それをきっちり勉強すれば、受かるんです。

 だから、いいんですよ、どこでも。

 現場にはいろいろな人がいます。

 むしろ、「心理学」じゃ現場で当たり前すぎて、逆に「体育学部!」とかの方が珍しくて重宝されるかもしれません。

 あなたが好きなことを学んで、それが現場で生かせるようなものなら、最高です。

 Q どうして法務教官になったんですか?

 ノリです。なんとなくです。だからある意味運命です。

 たまたま国家U種の申し込みに行って、たまたま見つけて、たまたま受けたら、たまたま受かりました。

 元々心理系の学部にいて、教職も取っていたけど、「先生」になろうなんてこれっぽっちも思ってませんでした。むしろ、先生にだけはなるまいと思っていました。

 で、国家U種落ちまして、代わりに入っていたのが法務教官合格通知。

 なんだこりゃ?あっこれも受けたっけ。

 どうしようかなーと思いつつ、当時フリーターでやることないから面接行きました。

 すると面接会場で会った人たちが、またいい奴だったんです。やる気に溢れていて。
 で、そいつらの話聞いてると、私もなんだかやりたくなってきて。そのノリで面接突破して。

 そのころ郵政も最終合格して、どっちを選ぼうかと迷ったんですが、まあ、法務教官の方が私にとっておもしろそうだな、と。自分の分野ってことはあんまり考えなくて、方向音痴だし子供好きだし、なにより面接で出会った、あんないい奴らと働けるんならいいなあと。あとはいっそ給料が郵政より良くて、宿舎がもらえるからお得だなあと。

 たいした動機じゃありません。「家裁の人」も「金八先生」も見てませんし、「非行少年たちを救おう!」とか確固たる信念があったわけでもありません。

 でもこうやって続いてますからね。へっぽこなりに。

 「向いている」とか「向いてない」とか、関係ないですよ。
 だって私のようなアホで適当でいい加減な人間、どう考えても適正テストは「向いてない」だったと思います。でも、続けていれば嫌でも法務教官っぽくなりますから、今 もう一回テスト受ければ間違いなく、「とても向いている」になるでしょう。

 人間、向きます!!(なんだそりゃ)

 Q 法務教官のやりがいは?

 あるといえばあるし、ないといえばないです。

 いくらがんばっても少年犯罪は減りません。たいして更正しないまま出院する少年もいます。

 でも、うれしい瞬間ならあります。

 少年たちと、心が通じ合ったと感じたとき。人間同士として、話ができたとき。響いたとき。わかってくれたとき。退院した少年が、元気でやっていると聞いたとき。

 辛いこともあります。

 退院した少年がヤクザを続け、殺されたとき。暴走族や薬物で死んだとき。何を言っても聞こうとしない少年。サービス残業。過労で死んでいく同僚。新聞に叩かれる不祥事。接待飲み会。

 やりがいなんて表裏一体。サービス残業をしないと少年と心が通じ合わないこともある。

 「大変だけどやりがいがあります」

 本当はそんな言葉でくくれません。でもこう言うしかない。
 それはどんな職場でも同じだと思うし、現場でないと見えないものでもあります。

* *

 やってみてください。がんばってください。とにかく来てください。待ってますから。

 質問でも不安でも、ありましたらBBSに書いてみてください。
 ぐーたらな私の代わりに、親切で男前な法務教官が、もしくは強く優しく美しい法務教官が、答えてくれることと思います。

 …もとい。私もちゃんと答えますから。


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