法務教官・3分間クッキング!


 パララッパッパッパッパ。パララッパッパッパッパ。
 パララッパッパッパッパッパッパッパッパッパッパッ。(オープニング)

 3分間クッキングの時間になりました。
 えー、本日は、
「非行少年」を使った料理、
「まっとうな人間」を作ってみたいと思います。

 時代はリサイクル。
 質が悪い、腐っている、調理が難しいと評判の悪いこのイモですが、捨ててしまう前に、もう一度、手をかけてみてください。
 きっと、中小企業などに喜んでいただける料理に生まれ変わってくれるはずです。

〜 材料(一人分) 〜

非行少年イモ」…1個

」…大さじ3杯

」…小さじ3杯

常識」…小さじ3杯

笑い」…少々

 

 まずは材料の説明から入りましょう。

 少年イモは日本全国で採れます。産地別で言うと、東京大阪名古屋などの、都会産がメインです。(*1)田舎産の少年イモは数が少なく、その代わり一つ一つの粒が大きめになってきます。

 ここで養殖ものと天然ものの違いについてですが、もちろん、扱いやすいのは天然の方です。というのはですね、養殖は主に「クミジムショ」で行われるんですが、この養殖をいたしますと、お尻のほうに根っこが出てくるんです。こういうイモは、俗に、「ケツもち」(*2)と呼ばれます。根っこを切るのはなかなか大変でして、考えなしに切ろうとするとケガをしたり、イモが傷ついたりしますので、細心の注意が必要です。もし周りにそれなりに力のある人がいるなら、その人に切ってもらうのもいいでしょう。
 天然ものは、夏休みと冬休みが旬(*3)です。警察によって収穫され、出荷されるまで、一ヶ月弱かかりますから、店頭に多く並ぶのは9月や、または年末などの駆け込み出荷で12月などですね。一個のイモを発見したら、その芋づるを手繰ることで まとまった数を収穫できます。

 こうして収穫された少年イモは、鑑別所に送られます。
 収穫には早いものや、小さいもの、または大きすぎるものなどが裁判所というふるいにかけられ、これらは別の所へ引き取られて行きます。(*4)

 しかし店頭に並んだものでも、長いもの、短いもの、大きいもの、形が変なもの、いろいろな種類があります(*5)ので、ちゃんと分類表示を見て、調理可能な種類のみを購入しなければなりません。

 では、調理に移りましょう。

 まず、少年イモをきれいに洗っていきます。警察や鑑別所でも、出荷前に、ある程度洗ったり叩いてくれていますが、世間の汚れは簡単には落ちません。イモに傷がついている場合は、特に念入りに洗っていきましょう。この処理を、「新入時教育あらい」といいまして、1週間から2ヶ月ほどかかります。(*6)

 それが終わったら、大鍋にうつします。20〜40個の少年イモを鍋に入れたら、」小さじ1杯を加え、くっつかないよう、5週間から3ヶ月、よくかき混ぜながら煮ていきます。「中間期教育前期煮込み」にするわけですね。この作業によって、カチカチのトゲトゲだった少年イモも、角がとれて形がそろい、アクが抜け、やわらかくなっていきます。味が染み込みやすくなるんです。(*7)

 しかし、中にはアクが強くてなかなか抜けない少年イモや、生きが良すぎて飛んだり跳ねたりする少年イモ腐って悪くなっている少年イモもあります。このようなものは、他の少年イモにも良くないので、個別に揚げます。これが、「単独処遇揚げ」です。(*8)

 はしで刺して、やわらかくなっているか確かめたら、水を変えて残りの 「」と「」を加えて、かき混ぜながらもう一度煮込みます。「中間期教育後期煮込み」です。(*7)味加減はお好みによって変えてください。その時はなるべく、素材の良さをなるべく生かせる味付けにしましょう。少年イモには、個性的で、良さがなかなか見つからないという特徴がありますが、なにかしらあるはずので、ちゃんと味を見ること。

 味が染み込まない少年イモは、「単独処遇揚げ」で何度か揚げ、やわらなくならないまでも、衣をつけ、味がつくようにします。

 味がしっかりついたら、仕上げに入ります。

 少年イモは舌触りが良くないので、常識」を加え、とろみをつけて食べやすくするのです。火は弱火、あまりかき混ぜずに、ことこと煮込みます。お好みで、笑いを加えると、色つやが良くなります。これが「出院準備期しあげ」です。(*9)

 皿の準備ができたら、出す日を決めます。
 そして、その日の一週間前になったら、大鍋から小鍋に移しましょう。これは、大鍋でついた余計な味や衣を落とし、少年イモの心の準備をさせる期間です。

 後は、お皿に盛り付けて完成。

「まっとうな人間」のできあがり。

 料理人にとっては一番うれしい瞬間です。(*10)

 社長・人事部のみなさん、いかがでしょうか。
 二十歳までなら返品も受け付けます。どうぞ一度、召し上がってみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1 少年犯罪は圧倒的に都会で起こる。田舎で起こる事件は、よほどひどい環境の奴が起こすものであるため、重大事件になる。

 

*2 利用されてされ尽くし、骨までしゃぶられかかってる少年も多い。

 

*3 暇になるとろくなことをしない。もしくは卒業による、「族」の卒業集会など。

*4 いろんな少年がいます。小さい犯罪とか、家庭内で指導できるだろうっていう少年は「保護観察」になって帰って行ったり、特に重大事件であれば、「検察官送致」「少年刑務所」ということにも…。

*5 いざ少年院送致となっても、短期少年院、長期少年院、女子少年院、医療少年院、いろいろ分けて送られます。

 

*6 この期間は施設にもよりますが、入院した少年はまずここで、集団行動訓練でみっちりしごかれます。形から入ります。

*7 メインです。個別面接や授業や行事や体育で、体力をつけ、資格取得を目指し、情操教育やしょく罪教育もします。後期は、SSTやロールプレイングで、人間関係スキルを学ばせます。

*8 態度不良・規則違反などの少年は、一人部屋に押し込めて内省です。落ち着いて考えさせます。

 

 

 

 

 

*9 ここまで時間が経てば、少年も職員もすっかりお互い気心知れています。信頼できる子には、少年院の外にボランティア活動に行かせたりもします。

 

 

 

 

*10 仮退院!かわいくなった少年と、永遠の別れ。やっててよかった法務教官。


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