■法務教官採用&研修制度の変遷■

 過去の制度の話で、今となっては役に立つような知識ではありませんが、同じ施設で働く先生方でも、年齢層によって現在と全く異なる過程を経て今に至っているのだという予備知識を持つ事は、職員間の相互理解においてそれなりの意義もあるかと思い、以下のとおりまとめてみました。現在のような「一年目:基礎科」「五年目:応用科」という制度は、意外に新しいものだったりするんですよね。

 法務教官の研修制度は、大体以下のように移り変わってきています。

・平成元年以前:法務教官の採用一年目の研修は「初等科」(全入)。「中等科」は試験選抜。(転勤を嫌って中等科は受けないという人も多く、俗に「初等科組」「初等科グループ」といわれた)
・平成元年度〜平成8年度:採用一年目に「初等科」、 採用二年目に「中等科」(全入)
・平成9年度〜平成11年度:採用一年目の研修が「基礎科」に変更。この期間の「中等科」は「初等科組」& 刑務官等(初等科修了者でかつ少年施設で勤務する者)が受験して入所するもののみ。
・平成12年度:採用五年目の法務教官による「応用科(第一回)」で、この応用科には「初等科組」&刑務官等 (初等科修了者でかつ少年施設で勤務する者)が受験して入所できた。
・平成13年度以降:現行の制度。採用一年目に「基礎科」、五年目に「応用科」 (いずれも対象者全入で試験による編入無し)

 平成8年度拝命の法務教官だけは、実は一年目(平成8年度)『初等科』、五年目(平成12年度)『応用科』という過渡的な形になっています。
 つまり、平成12年度の第1回応用科だけが「初等科修了者」を対象にしており、そういう事情でこの年までは「初等科組」&刑務官等(初等科のみ修了)で少年施設で勤務する者が受験して入所できていたそうです。しかし、平成13年度からの応用科は対象者が「基礎科修了者」となり、全入のため試験制度も想定されていません(特殊な事情で13年度以降も初等科修了者が入所した事例もあるにはあるのですが)。

 こうした研修制度の変更に平行して、現場で働く「初等科組」や少年施設で働く刑務官(初等科修了)を 全て中等研修(中等科・応用科)修了者へ移行させるため、過渡期の平成9年から平成12年までの間、各少年施設に「中等科教育を受けていない職員には平成12年度までに受験させた上全員修了を期すように」というような内容のお達しが再々下されていたとか。
 …でも、特殊なケースだったりその施設の庶務課長さん(及び幹部)がうっかりしていたりでとうとう入所できなかったケースもちらほらあったらしく…(>_<)
 その場合、基本的に、少年施設で働く刑務官は一度行刑に戻って中等科を受けない限りずっと初等科修了でしかないということになり、本人にとっては身分的に不安定な形になってしまいます。
 したがって、刑務官が少年施設に勤務しつつ中等研修を受ける機会が得られるチャンスが、平成12年度までの中等科・応用科だったようです。



年齢層 実施期間 採用試験 初等研修 中等研修
概ね
40歳以上〜
平成元年以前 国家公務員試験
(ニ種)
拝命一年目の職員対象
「初等科」(全入)
拝命二年目以降の職員対象「中等科」(試験選抜)
  • 初等幹部研修という位置付け
  • 転勤を嫌って受験しない人も多く、「初等科組」「初等科グループ」等と呼ばれていた
30代半ば〜40歳 平成元年度〜
平成8年度
法務教官採用試験
(平成元年〜)
拝命一年目の職員対象
「初等科」(全入)
拝命二年目以降の職員対象
「中等科」( 全入)
・位置付けとしては、平成元年以前の制度から現行制度への移行期間にあたる
概ね30代前半まで
(現行の研修制度の適用)
平成9年度〜
平成11年度
拝命一年目の職員対象
「基礎科」(全入)
「初等科組」及び少年施設在籍の刑務官(初等科修了者)を対象とした「中等科」(試験選抜)
平成12年度 拝命五年目・初等科修了者を主な対象とする
第一回「応用科」
「初等科組」及び少年施設在籍の刑務官(初等科修了者)が 入所できる最後の中等研修でもあった)
平成13年度以降
(現行制度)
拝命五年目の職員対象
「応用科」(基礎科修了者全入)


■上記表の捕足■

平成元年以前
  • 二種(行政)で採用された後、各行政施設で面接を受ける等して採用が決まっていたが、 人数調整の関係等から、希望に関わらず配属されたケースもあった
  • 採用試験によるものの他、主に特殊な技能を持つ職員を確保する目的での選考採用もあった
平成元年度〜平成8年度
  • 平成元年度には法務教官としての専門性を確保するため、採用試験を一新すると共に、 中等科を全職員に課すなどの改革がなされた
  • 平成8年度には「初等科グループであっても今後は転勤対象になりうる」 「(この時点で)50歳未満で初等科しか出ていない者については、 平成12年度までに中等科(応用科)を受験し全員研修修了を期すように(少年施設に在籍する刑務官も含む)」 といった内容の通達が出されている
平成9年度〜平成11年度 (特記事項無し)
平成12年度
  • この第一回「応用科」の対象者である平成8年度拝命法務教官だけは過渡期にあたり 「初等科」→「応用科」となっている。したがって、この第一回「応用科」は 「初等科修了者」を対象とする唯一の「応用科」であり、 「初等科組」及び少年施設在籍の刑務官(初等科修了者)が参加できる最後の中等研修となった
平成13年度以降 (特記事項無し)

 

■ おやっさん さんによる補足■   2006 3月 8日(水)BBSより

平成元年以前の採用は、二種(中級)というわけではなく、三種(初級)もいれば、A種もいるし、B種、完全な「施設選考採用」もいるという種々雑多な採用状況でした。ですから、今は2-2が初任の俸給ですが、かつては1-6(大卒の場合)であったわけです。A種にしろ、完全なA種(現在でも選考採用の技官はこの採用方式。但し、大学院修士課程以上が対象)とA種と同等の扱いを受ける現地採用(通称「A認」。特殊な教員免許、例えば音楽や美術といった教科の人がいた)の2パターンがあったのです。
A種や一部のA認で採用された法務教官は「非研修」(高等科に行かないで、という意味)で中級管理職(教務課長や庶務課長。現在では庶務課長ないし企画統括専門官)に登用された方もいます。
あるいは、現地採用では「雇」(「やとい」)として採用され、庶務課の用度係や会計係で勤務し、約半年の試用期間を経て、事務官任用、更に一年程度の期間を経て教官採用というケースもままありました。実際、昭和40年代までは、この雇採用が主流でした。
もう一つ、忘れてはならないのが「青少年矯正・保護専門職 上級・中級試験」です。この制度で採用された方はほとんど定年を迎えられていますが、基本的には上級職の専門試験で、幹部教官と保護観察官(保護観察官は基本的には上級職相当の専門職です。実態は落ちていく一方ですが)を採用する為の試験でした。しかしながら、これは保護局の都合でほんの数年で姿を消しました。保護観察官(任官即補職という本来の観察官)の任用が年2名ないし3名という少数であるため、矯正と併せても十名程度という極めて少数の採用しかなく、併せて昭和40年代後半の収容の激減(のちにこれが昭和52年の運営改善通達に繋がる)とあいまって制度が維持できなくなります。

以上の採用形態を考えると、現在の法務教官採用試験は、田中角栄時代に始まる公務員の待遇改善と、昭和52年の運営改善、それに伴う各少年院の専門化、教員免許有資格者などの専門職対応学生の募集、刑務官との待遇比較、全体としての法務教官の待遇と素質改善を明確化したものとして位置付けられると考えられます。(実はここには昭和22年以前の矯正院における「教官」と「補導」の身分差別や、昭和23年に少年院として国立施設化された旧「少年保護団体」の職員との格差、上級職採用の教官とそれ以外の教官(有り体に言えば高等科と中等科以下)の格差などもう少しウェットな話があるのですが、差し障りがあるので言及しません)

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