そして二度寝。実際起きるのはもうちょっと遅くなる。すげー早寝早起き。

　　　　　　　　　　　　たいてい、パンかシリアルで済ます。
　　　　　　　　　　　　たまにごはんも炊く。おかずは納豆と味噌汁。

　　　　　　　　　　　　ひょっとしたら今日週休だったかも！？なんて淡い期待を胸にカレンダーを見るが
　　　　　　　　　　　　出勤日である。何度見てもそうである。
　　　　　　　　　　　　さらば我が家よ。今度いつ帰れるんだ。
　　　　　　　　　　　　外に干した洗濯物も、取り込む時期を逃さぬように祈るしかない。

　　　　　　　　　　　　さすがのタテ社会。下っ端は朝早くから来て掃除しなきゃいけない。
　　　　　　　　　　　　私は洗礼済みなので、パソコンを開き、前日からたまってた仕事に取り掛かる。
　　　　　　　　　　　　もし何日か続けて休みがあった場合、机が見えないくらいになっており、
　　　　　　　　　　　　見なかったフリして逃げ出したくなる。

　　　　　　　　　　　　幹部職員・庶務課職員・教育課職員みんなそろったところで、簡単な引き継ぎ。
　　　　　　　　　　　　少年の数、体調を崩してるやつ、精神を崩してるやつの様子などなど。
　　　　　　　　　　　　そのへん病院や老人ホームの引き継ぎと変わらん。

　　　　　　　　　　　　現場ではこれが第一の情報。
　　　　　　　　　　　　昨日少年を寝る前まで見ていた勤務者から、
　　　　　　　　　　　　こと細かに重要な情報、ちょっといい話、小ネタ話などを仕入れる。
　　　　　　　　　　　　これを元に今日、自分がこの寮を預かるのだから、なんでも知っておきたい。

　　　　　　　　　　　　ラジオ体操。運動させるというよりも、手を抜いてないか、指先は伸びているか、
　　　　　　　　　　　　服装や表情、雰囲気に変なところがないか、そういうところをみている。

　　　　　　　　　　　　資格取得のための実習・訓練などである。２つ３つ資格を取って帰っていく少年も多い。
　　　　　　　　　　　　これがぜんぶ税金だと思うと被害者の方々には実に申し訳ない気持ちになる。
　　　　　　　　　　　　しかしわかってください。こうやってなんとか
　　　　　　　　　　　　うちのバカどもをどこかの職場に押し込まないとまたフラフラしてしまうのです。
　　　　　　　　　　　　わかっちゃいるけど、「金返せ」って感じだよなあ。

　　　　　　　　　　　　ああ疲れた。ちなみに職員も資格を取らされる。
　　　　　　　　　　　　その勉強は、もちろんプライベートを使ってやらされる。

　　　　　　　　　　　　たいがいは朝注文しておいた出前か、弁当である。
　　　　　　　　　　　　時間は１時間。もしくは３０分。
　　　　　　　　　　　　引き継ぎや雑用に時間をとられ、２０分あればいい方である。
　　　　　　　　　　　　昼飯を食う時間もなくて、腹ペコで少年の昼飯を横で見ているのもザラにある。
　　　　　　　　　　　　ちなみに幹部はまるまる１時間休憩なので、
　　　　　　　　　　　　現場職員のこんな悲惨な気持ちに気づいてくれるわけはなく、
　　　　　　　　　　　　仕事が終わるまで何も口にできない。朝飯を抜いた日にゃ泣くほかない。

　　　　　　　　　　　　少年の休憩時間。各自の部屋に戻って読書である。
　　　　　　　　　　　　言い忘れたが、少年院では無駄口厳禁。つまりおしゃべり禁止である。

　　　　　　　　　　　　午前の実習以外にも、体育や「問題群別指導」といって薬物の害を勉強したり、
　　　　　　　　　　　　ヤクザから逃げるにはどうしたらいいか考えたりする授業がある。

　　　　　　　　　　　　おつかれさま。

　　　　　　　　　　　　ごはんに味噌汁に魚のフライ２枚に野菜、煮物、酢物。豪華だなあ。

　　　　　　　　　　　　日勤の職員は名目上は１７時で少年寮から去る。
　　　　　　　　　　　　なのでこっからはその日の夜勤の職員の仕事。
　　　　　　　　　　　　少年一人一人につき「行動観察」を書く。
　　　　　　　　　　　　その子の一番印象的だったこと、たとえば「問題群別指導では
　　　　　　　　　　　　積極的に挙手していたが、母親についての質問には答えようとしなかった」など。
　　　　　　　　　　　　まあ、第三者がつける日記みたいもんだ。
　　　　　　　　　　　　全員分の一日を憶えておくのは骨が折れる。
　　　　　　　　　　　　もし何も書くことがなければこっちから何か指導を入れてみたりしてネタを作成。

　　　　　　　　　　　　ノート１ページは書けということになっているが、それを読むのも私たち。
　　　　　　　　　　　　そうやって自分で自分の仕事を増やす、損な商売である。
　　　　　　　　　　　　少年のタイプによっていろいろな日記を書く。
　　　　　　　　　　　　いい子ぶった日記から、正直に「先生がむかつく」と書く日記。どっちもかわいい。

　　　　　　　　　　　　青二才どもを寝かしつけ、こっからは大人の時間！
　　　　　　　　　　　　といえば聞こえはいいが、残業しつつの見回り勤務である。
　　　　　　　　　　　　少年がバカなことをしてないか、不法侵入者はいないかを見回る。目が回る。
　　　　　　　　　　　　行動観察・日記のコメントを書く。

　　　　　　　　　　　　選択はふたつ。仕事を明日に回して仮眠をとるか、寝ずに仕事して明日早く帰るか。

　　　　　　　　　　　　後者を選んだが終わりそうもなく、あきらめた結果。

　　　　　　　　　　　　できればこのままずっと寝ていたい。

　　　　　　　　　　　　できればこのままずっと寝ていてほしい。

　　　　　　　　　　　　そして少年はますます健康に、職員はますます不健康になっていく。

　　　　　　　　　　　　本来ならばここで勤務終了となるのだが、人手不足なので、
　　　　　　　　　　　　超過勤務扱いで昼まで仕事である。
　　　　　　　　　　　　３０分だけ休憩がある。カップラーメンを食う。

　　　　　　　　　　　　早く時が過ぎてくれ。

　　　　　　　　　　　　やっと終わった。

　　　　　　　　　　　　そして始まった。

　　　　　　　　　　　　なぜなら、面接してやる時間がない。
　　　　　　　　　　　　少年たちの更生は、ある意味職員のボランティア精神が頼りだ。
　　　　　　　　　　　　面接は真剣勝負。
　　　　　　　　　　　　少年のためを思えばこそ、きついことも言う。言うべきだと思う。
　　　　　　　　　　　　願わくば、こんな睡眠不足の頭で怒鳴らせないでほしい。

　　　　　　　　　　　　昨日終わらなかった分である。
　　　　　　　　　　　　厳しく叱った子に、優しめのコメントを書いてやる。アメとムチ。

　　　　　　　　　　　　こういう仕事も法務教官の仕事。まるでお父さん。

　　　　　　　　　　　　面接だけでは足りないので、いわば通信教育として
　　　　　　　　　　　　テーマ作文を書かせることが多い。

　　　　　　　　　　　　やればやるほど仕事が増える。キリがないから自分でケリつける。

　　　　　　　　　　　　さらにバカな理由で私の仕事を増やすやつがいる。

　　　　　　　　　　　　「調査事項」として挙げるか、叱って済ませるか。他の容疑者はどうするか。

　　　　　　　　　　　　夜勤明けのときは運転せず、電車で帰ることにしている。

　　　　　　　　　　　　ようやくまともな食事にありつけるぞ。

　　　　　　　　　　　　電子レンジはわが戦友。

　　　　　　　　　　　　風呂上りに野球中継を見ながらビールをきゅー。
　　　　　　　　　　　　これでかわいい嫁さんがいればなあと思う。

　　　　　　　　　　　　これ書いてます。

　　　　　　　　　　　　おやすみなさい。