やばい。昨日飲み過ぎたか。だいたい私はカラオケまでで十分だと言っているのに
　　　　　　　　　　　　あの愚友が三軒目に行こうと言うからあの店のそういえば串焼きうまかった…
　　　　　　　　　　　　じゃない！しっかりしろ起きるんだ！手続書はいやだぞ！

　　　　　　　　　　　　どうだ、新記録２０分を達成したぞ。朝はいつも自分との戦いである。

　　　　　　　　　　　　これだから月曜日はいかん。

　　　　　　　　　　　　少年の私物は、台帳を作って管理している。
　　　　　　　　　　　　出廷前に、領置係の職員と一緒に、出廷の子全員の荷物を準備する。
　　　　　　　　　　　　少年院に行く子はこのまま鑑別所に帰ってくるので、
　　　　　　　　　　　　荷物を持たせる必要はないのであるが、そこはそれ、「まだわからない」。
　　　　　　　　　　　　絶対お前少年院だろという悪い奴でも、、「まだわからない」。
　　　　　　　　　　　　生殺与奪は裁判所、我々に判断の権利はない。

　　　　　　　　　　　　審判のある少年を、官用車で裁判所に連れて行く。
　　　　　　　　　　　　鑑別所に来た少年にとって、最大イベントにして最後の審判。
　　　　　　　　　　　　緊張のあまりギクシャクしているので、笑わせて和ませる。

　　　　　　　　　　　　少年審判は非公開。
　　　　　　　　　　　　部屋の奥には裁判官と調査官と書記官、手前には少年と両親、そして私ともう一人。
　　　　　　　　　　　　１０人にも満たないコンパクトなものです。
　　　　　　　　　　　　しかし裁判官は、喋りにおいてはしょせん素人、
　　　　　　　　　　　　百戦錬磨の少年院の先生に比べたら、どうにも下手である。
　　　　　　　　　　　　言葉が難しかったり。聞き方が下手だったり。そして語りが薄っぺらい。
　　　　　　　　　　　　だが年の功、年配の裁判官はなかなかいい裁判をしてくれます。　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　審判はおおむね４０分から１時間…のはずなんだが。
　　　　　　　　　　　　いかん。眠くなってきた。

　　　　　　　　　　　　少年に処分を言い渡す。「…よって、少年を中等少年院送致とします。」
　　　　　　　　　　　　この瞬間、どんな不良もつっぱった奴も、泣き崩れる。

　　　　　　　　　　　　早く終わってくれー

　　　　　　　　　　　　ほらまた遅れた！
　　　　　　　　　　　　ちくしょう昼休みがなくなる！帰るぞ○○！いつまで泣いてんだ！

　　　　　　　　　　　　１５分で昼飯を食って、昼からの出廷に備える。

　　　　　　　　　　　　昼からの審判がまたねむいのです。

　　　　　　　　　　　　緊張しまくる少年を同じように審判廷に連れてくる。
　　　　　　　　　　　　職員にとっては何十回、何百回と繰り返される業務。
　　　　　　　　　　　　その辺が世間とずれるところなので、一般の人と話していて、
　　　　　　　　　　　　「こないだ裁判の帰りさー」とか普通に喋って、引かれることがある。

　　　　　　　　　　　　今度は保護観察となり、少年は親の元に帰って社会でがんばることに。
　　　　　　　　　　　　「ありがとうございました！」もう来るなよ！！

　　　　　　　　　　　　今回は他の職員に任せ、出待ちをする。ひとときのくつろぎタイム。

　　　　　　　　　　　　午後は二人とも保護観察になった。職員だけで帰れるぞ。

　　　　　　　　　　　　出廷の終わった職員も、容赦なく入所受けや面会立会に駆り出される。

　　　　　　　　　　　　新しく入所した少年に生活の説明をしたり、
　　　　　　　　　　　　日用品や事務用品、新入生の服の準備をしたり、業務は尽きない。

　　　　　　　　　　　　いい日だ。なんてラッキーなんだ。どうしよう、なんでもできるぞ。
　　　　　　　　　　　　そうだなあ、部屋の片付けをして、洗濯して、風呂にもゆっくり入ろう。
　　　　　　　　　　　　まだ見てないＤＶＤもあるし、音楽聴きながら読書もいいなあ。
　　　　　　　　　　　　最近運動してないしな。ちょっと走ろうかな。

　　　　　　　　　　　　よし走ろう！と決めて、ジャージに着替える。
　　　　　　　　　　　　でもその前に明日の天気を見ておこう。
　　　　　　　　　　　　テレビをつけたら、お笑い番組をやっている。
　　　　　　　　　　　　あっヒロシが出ている。これ見てから行こう。

　　　　　　　　　　　　あれ？

　　　　　　　　　　　　…おかしい。さっきの余裕はどこにいったんだろうか。